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深夜2時に、通知が鳴りました。 iPhoneの画面を暗い部屋で確認すると、見覚えのないユーザー名からメッセージが届いていました。「アプリが起動しなくなりました。明日の朝イチで使いたかったのに」——短い文章なのに、なぜかじわっと申し訳ない気持ちになったことを覚えています。 名前も顔…
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Lily さんへの応援になります
深夜2時に、通知が鳴りました。 iPhoneの画面を暗い部屋で確認すると、見覚えのないユーザー名からメッセージが届いていました。「アプリが起動しなくなりました。明日の朝イチで使いたかったのに」——短い文章なのに、なぜかじわっと申し訳ない気持ちになったことを覚えています。 名前も顔も知らない、会ったことも、これからも会わないかもしれない誰か。それでも、その人の「明日の朝」がそこにあった。その夜から、個人開発という言葉の意味が私の中でほんの少し変わりました。今日はその夜のことと、そこから変わった自分の話を書いてみようと思います。
その日は疲れていて、早めに寝るつもりでした。だからこそ、通知が余計に刺さったのかもしれません。
メッセージは3行だけでした。「アプリが起動しません。iPhoneを再起動しても直りません。明日の朝に使う予定でした」。それだけ。苦情でも怒りでもなく、ただ困っているという事実の報告でした。
名前は英語のアルファベット。プロフィール画像はデフォルト。どんな人なのか、何のために使おうとしていたのか、何もわかりません。ただ、その人が明日の朝に何かを使おうとしていたこと——それだけははっきりわかりました。
正直に言うと、最初は「明日確認します」と返してそのまま寝ることも考えました。深夜2時です。一人で開発している個人アプリです。サポートの義務なんてどこにもありません。
でも、なぜか手が動きませんでした。「明日の朝」という言葉が頭に残っていたのだと思います。その人にとっての明日の朝は、私にとっても同じ明日の朝です。6時間後には来てしまう。
コードを開いて、まず再現確認から始めました。
最初の30分は何もわかりませんでした。手元の環境では普通に起動します。ログを見ても、特にエラーらしいものが出ていない。「これ再現できないやつかもしれない」と思いかけたとき、ふとあることに気づきました。
直近のアップデートで、ある設定の初期値を変えていました。新規ユーザーには影響しないと思っていたものです。でも、特定の条件を持つ既存ユーザーには、その変更が予期しない形で当たっていた。
再現できました。確かに落ちる。
そこから修正自体は30分かかりませんでした。でもその30分の間ずっと、「この人は今どうしているんだろう」と思っていました。もう寝ているかもしれない。スマホを手元に置いて待っているかもしれない。何も知らずにいるかもしれない。
修正が完了して、審査に出して、「確認できました。修正版を申請しました。明日の朝には間に合わないかもしれませんが、急いで対応します」と返信を送りました。深夜3時半でした。
5分後に、「ありがとうございます」と返ってきました。
その人も起きていたんです。
たった5文字でしたが、その「ありがとうございます」が今でも記憶に残っています。何かが報われたというより、何かが確かにつながった感覚でした。
その夜の前まで、私は個人開発を「自分のために」やっていました。作りたいから作る。技術を覚えたいから作る。ポートフォリオになるから作る。
それは今でも変わっていません。自分のモチベーションが一番大事です。
でも、あの夜から「使ってくれる誰かがいる」ということが、リアルに感じられるようになりました。
個人開発をしていると、ダウンロード数やアクティブユーザー数という数字が出てきます。あの夜の時点で、私のアプリを使ってくださっていた方は200人ほどいました。200という数字はなんとなく知っていた。でも、その200人の中に「明日の朝に使う予定だった人」がいることは、バグレポートが届くまで実感できていませんでした。
数字は抽象的です。でも、3行のメッセージは具体的でした。
人が使っているということは、その人の生活の一部に自分のアプリが入り込んでいるということです。当たり前のことなのに、それを本当に理解したのはあの夜が初めてだったかもしれません。
翌朝、審査が通ってアップデートが公開されました。
同じユーザーから「使えるようになりました。助かりました」という返信が来ました。それだけでした。案件が解決したらサクッと終わる、ビジネスライクな会話です。
でも、それでよかった。
個人開発のサポートは、感動的なやり取りにならなくていいんだと思います。困っていた人が困らなくなる。それだけで、十分に意味があります。
企業のアプリなら、専任のサポートチームがいます。深夜でも対応できる体制があります。でも個人開発には、私一人しかいない。
それはたしかに弱さです。でも同時に、開発者と使用者の間に何も挟まらないということでもあります。バグレポートが直接届いて、直した人間が直接「修正しました」と返せる。
その夜のやり取りは、私が一人だったからこそできたものでした。
あれから、バグレポートが届いたときの向き合い方が変わりました。
以前は「面倒だな」と思う気持ちが先にありました。今は「誰かが困っている」という事実が先に来ます。その変化だけで、腰の上がり方が全然違う。
全部のレポートに深夜対応できているわけではありません。翌朝確認することの方が多いです。でも少なくとも、「明日でいいや」という気持ちのまま寝なくなりました。
ただ、気負いすぎるのも良くないとも思っています。
深夜に毎回起き上がっていたら、体が持ちません。個人開発は続けることが一番大事で、無理をして倒れたら誰も得しない。
大事なのは「気持ちの持ち方」だと思います。ユーザーのことをリアルな人間として想像できているかどうか。それだけで、開発の細かい判断がじわじわ変わってきます。
あの夜のことを、私は「個人開発が変わった夜」として記憶しています。
技術的には何も変わっていません。バグを直しただけです。でも、その夜から「自分が作っているものは、誰かに届く」という感覚が、うっすら体に染み込みました。
贈り物って、受け取る人のことを考えて作るものだと思います。直接渡せない贈り物もあります。自分の名前も出ない贈り物もあります。でも、使ってもらえたとき、役に立てたとき、少しだけ「よかった」と思える——それは、贈り物に似ています。
個人開発をしている方へ。
作ることが好きで、でも「誰かのために」という感覚がうまくつかめていないとしたら、バグレポートを待ってみてもいいかもしれません。怖いかもしれないけれど、届いたとき、あなたの開発の意味が少し変わるかもしれません。
夜中に直した小さな1件が、私の開発を変えてくれました。
Lily(@bokuwalily)― 個人開発者。AIと二人三脚で、iOSアプリやWebサービスを作っています
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Lily(@bokuwalily)― マーケ組織50名規模を統括するCMOを経て、いまは個人でiOSアプリやWebサービスを作っています。集客・導線設計と、AI導入・業務自動化の相談を受けています
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