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ある月の末、スマホに通知が届きました。クレジットカードの引き落とし確認でした。金額を見て、一瞬フリーズしました。 その月、アプリの収益はゼロ円でした。ユーザーは数人いましたが、課金してくれた人はひとりもいませんでした。なのにサーバー代だけは、いつも通りきっちり引き落とされていまし…
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Lily さんへの応援になります
ある月の末、スマホに通知が届きました。クレジットカードの引き落とし確認でした。金額を見て、一瞬フリーズしました。 その月、アプリの収益はゼロ円でした。ユーザーは数人いましたが、課金してくれた人はひとりもいませんでした。なのにサーバー代だけは、いつも通りきっちり引き落とされていました。 こんな話を書こうと思ったのは、同じ経験をしている人に届けたかったからです。技術的な解決策でも、マネタイズの戦略でも、成功体験でもありません。ただ、あのときの「解約ボタンを開いて、でも閉じた」瞬間の話を、正直に書き残しておきたかったのです。
正確に言うと、その月の売上は0円で、サーバー費用は約3,000円でした。金額としては大きくない。でも、「収益よりコストが上回っている」という事実は、数字の大小に関係なく、じわじわと心に刺さります。
アプリ自体はリリースから3ヶ月が経っていました。ユーザーは少しずつ増えていて、フィードバックも届いていました。「使いやすい」「こういうの欲しかった」という言葉も、確かにもらっていました。でも、お金にはなっていませんでした。
引き落としの通知を受け取った翌朝、Lilyはクラウドサービスの管理画面を開きました。「プランを変更する」のページを開いて、一番下にある「サービスを解約する」というリンクを見つけました。
クリックしました。
解約の理由を選ぶ画面が出てきました。「費用が高い」「使い方がわからない」「別のサービスに移行する」……いくつかの選択肢が並んでいて、どれも自分に当てはまらないような、全部当てはまるような気がしました。
それで、Lilyはそのタブを閉じました。
解約はしませんでした。でも、「なんで自分はこれを続けているんだろう」という問いが、そのまま頭の中に残りました。
あの夜、自分に問いかけてみました。
「なぜこのアプリを続けているの?」
いくつかの答えが浮かびました。「いつか収益化できるから」「ユーザーに喜んでもらえているから」「やめるのが悔しいから」。
でも正直に言うと、どれも「続ける理由」としては弱いな、と感じました。「いつか」は来るかわからない。ユーザーは喜んでいるかもしれないけれど、それで自分の生活が回るわけじゃない。「やめるのが悔しい」は、サンクコストの罠みたいで少し恥ずかしい。
このときLilyが気づいたのは、「続けるかどうか」の前に、「自分が今どんな感情でいるか」をちゃんと見ていなかったということでした。
焦り? ちょっとあります。 悔しさ? あります。 恥ずかしさ? 正直、少しあります。
誰かに「アプリ作ってるんですか、すごい!」と言われるたびに、「でも全然売れてないんだよな」という言葉を飲み込んでいました。個人開発者として自己紹介することに、少し後ろめたさを感じていました。収益がないと、「本当に開発者と名乗っていいのか」という気持ちが湧いてきていたのです。
それはたぶん、正直な感情でした。そしてその正直さを認めるだけで、少し楽になりました。
感情を整理した後で、改めて「それでも続ける」という選択の中身を分解してみることにしました。
「やめない」は「続ける」とは少し違います。
「続ける」は前向きな動詞です。目標があって、計画があって、進んでいくイメージ。でも「やめない」はもっと静かな選択です。大きな理由はなくて、ただ今日はまだここにいる、という感覚に近い。
Lilyはこのとき、「大きな理由を見つけなくていいかもしれない」と思いました。
代わりに、アプリに関わる小さな好きなことをメモしました。箇条書きで、気取らずに。
お金にならなくても、これらは本当のことでした。
全部がポジティブではなくて、「リリースのたびに怖い」「誰にも見てもらえないと虚しい」という本音も混じっていました。でも、それも込みで、アプリを持ち続けることに自分はまだ納得できているな、と気づきました。好きなことと嫌なことを両方書き出してみたら、好きな側が少しだけ重かった。それで十分でした。
感情の整理はできました。でも、「だから続けます!」だけで終わると、来月も同じ通知が来て、同じ気持ちになります。それは嫌でした。
だから、小さな行動を一つだけ変えることにしました。
まず、コストの内訳をスプレッドシートに書き出しました。何にいくら払っているか。どれが必須で、どれは削れるか。やってみると、使っていないオプションサービスに月数百円払っていることがわかりました。それだけ解約しました。コスト全体は少し下がりました。
劇的な変化ではありません。でも「なんとなく払い続けていた」状態から「把握して払っている」状態に変わりました。それだけで、少し気持ちが違いました。自分がこのアプリにいくら投資しているかを、ちゃんと見ている、という感覚です。
もうひとつ変えたのは、収益の目標の粒度でした。
「早く黒字にしないと」という漠然とした焦りを持っていましたが、それを「まず1件、課金してもらえる状態にする」という具体的な目標に置き換えました。
月の売上が1円でも入れば、それはもう「収益ゼロ」じゃない。たった1件のサポートでも、「誰かがお金を出してくれた」という事実は、気持ちのベースラインをぐっと上げてくれます。
ゼロと1は、数字的には1しか違わないけれど、心理的にはまったく別の世界にある気がしています。
あの「解約ボタンを閉じた夜」から、数ヶ月が経ちました。
アプリは続いています。劇的に売上が増えたわけではありません。でも、初めての課金が入りました。ひとりだけど、そのひとりが本当に嬉しかったです。通知が来たとき、声に出さず「やった」と思いました。画面を閉じてから、もう一度開いて確認しました。
収益がサーバー代を上回った月もありましたし、また下回った月もありました。毎月安定して黒字、という状態にはまだなっていません。
でも今は、「なんでこれを続けているんだろう」という問いに対して、少し落ち着いて答えられます。
「好きだから、というのが正直なところです。お金の話は、少しずつ向き合っています」
それで十分かどうか、Lilyにもまだわかりません。でも、少なくともあの夜よりは、答えに自信があります。
売上よりコストが高い月を、経験したことがある方は、たぶん少なくないと思います。
そのとき「やめたほうがいいのかな」と思う気持ちは、まったくおかしくありません。Lilyも思いました。感情を整理しないまま「続けます!」と言い続けることは、長くは続かないし、楽しくもないと思います。
ひとつだけ提案するとしたら、「続けるかやめるか」を決める前に、「今自分はどんな気持ちか」を一度言語化してみることです。Lilyが試した方法は、紙にメモするだけです。「今どんな感情?」「なにが好きで、なにが嫌い?」を箇条書きにするだけ。それだけで、少し視界が開けました。
正解はないと思います。やめることが正解の場合もあると思います。でも、感情を整理した上での「続ける」は、なんとなくの「続ける」より、ずっと強いと、Lilyは感じています。
解約ボタンは、いつでも押せます。今日押さなかったのは、逃げたからじゃなくて、今日はまだここにいたかったから。そう思えるなら、それはちゃんとした選択です。
売上よりサーバー代が高い月も、いつかの糧になるといいな、と思いながら、今日もアプリのダッシュボードを開いています。
Lily(@bokuwalily)― 個人開発者。AIと二人三脚で、iOSアプリやWebサービスを作っています
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Lily(@bokuwalily)― マーケ組織50名規模を統括するCMOを経て、いまは個人でiOSアプリやWebサービスを作っています。集客・導線設計と、AI導入・業務自動化の相談を受けています
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