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「チップをリクエスト」で著者にチップの受け取り設定をお願いできます

去年の秋、何気なくメモ帳を開いて、計算をしてみました。 その月の収益と、そこに費やした時間。たったそれだけの数字を割り算するだけなのに、手が少し止まりました。出てきた答えを見て、笑えばいいのか、泣けばいいのか、しばらくわかりませんでした。 個人開発を始めてから、お金の話は意識的に…
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「チップをリクエスト」で著者にチップの受け取り設定をお願いできます
去年の秋、何気なくメモ帳を開いて、計算をしてみました。 その月の収益と、そこに費やした時間。たったそれだけの数字を割り算するだけなのに、手が少し止まりました。出てきた答えを見て、笑えばいいのか、泣けばいいのか、しばらくわかりませんでした。 個人開発を始めてから、お金の話は意識的に避けてきたところがあります。でも「時給を計算してみた」という話を、あるオンラインコミュニティの投稿で見かけて——その人の正直な告白に引きずられるように、自分もやってみたんです。その計算が、思いがけず「なぜ続けるのか」をくっきり教えてくれました。今日はその話を書きます。
きっかけは、同じ個人開発コミュニティに投稿していたKさんの記事でした。Kさんはあるツールを3ヶ月かけて作り、月収が2,800円になったとき、総作業時間が180時間だったことに気がついたと書いていました。計算すると時給は約16円。「コンビニのバイトの100分の1以下だった」という一行に、笑えないのに笑ってしまいました。
その投稿を読んだ夜、自分も計算してみることにしました。リリースから半年。累計収益は約38,000円。コードを書いていた時間、デザインを調整していた時間、サポートメールに返信していた時間、ランディングページを何度も書き直していた時間……手帳のログをかき集めて足すと、だいたい620時間になりました。
割り算をした結果は、時給61円でした。
画面に出た数字を、しばらく眺めていました。怒る気にもなれない、不思議な感覚でした。「笑えないほど低い」のに、ずっと見つめてしまうのは、その数字が嘘をつかなかったからだと思います。
バイトに換算したら0.6時間分。ランチ1回分にもならない。そう思ったとき、頭の中でふと別の声が聞こえました。「じゃあなぜ620時間もやったの?」
その問いに答えようとして気づいたのは、自分がずっとお金「以外」のものを理由に動いていたということでした。
最初の1ユーザーが登録してくれたとき、通知が来ただけで部屋の中で一人ガッツポーズをしました。リリース直後に「こういう機能があったら嬉しい」とフィードバックをもらったとき、深夜2時なのに返信しながらニヤニヤしていました。
時給61円の人間が感じる喜びじゃないな、と思いました。でもそれは本当のことで。
ただ、計算にはもう一つの顔がありました。620時間のうち、本当に必要だった作業は何割か、という問いです。
振り返ると、誰にも頼まれていないのに着手した機能が、少なくとも4つありました。「あったら面白いかも」だけで動き始め、結局使われないまま残っているもの。単純計算で60〜80時間はそこに消えています。
Kさんの投稿のコメント欄に、別の方が「計算すると、無駄な作業の重さがはっきり見える」と書いていて、それも刺さりました。時給を出す行為は、自分の時間の使い方を棚卸しする行為でもあると気づきました。
同じコミュニティで知り合ったMさんに、この話をしたのは計算した翌週のことです。Mさんは自分よりずっと早く個人開発を始めていて、複数のツールをリリースしてきた方でした。
「Lily、その時給の数字、メモした?」と聞かれました。「ずっと眺めてたけど、特にメモはしていない」と答えたら、「それがもったいないよ。数字は覚えるためじゃなくて、次の判断に使うためにある」と言われました。
その言葉で、何かが切り替わりました。
Mさんが教えてくれたのは、月に一度、「この機能の実装に何時間かけるか」を決める前に、過去の時給を参照する習慣でした。たとえば時給60円のフェーズで、誰も要望していない機能に40時間かけようとしているなら、その判断を一度止める。本当に今やる必要があるか、問い直す。
それだけのことですが、自分の中では大きな変化でした。それ以降、新しい機能を思いついたときに「これは今じゃなくていいかも」と一度置けるようになりました。思いつき4つのうち、一番刺さると思うものだけ着手する。小さいですが、確かな変化でした。
計算してから1ヶ月ほど経ったころ、なんとなく気分が軽くなっていることに気づきました。
時給61円という数字は、変わっていません。でも、それが「まずい状態」ではなく「今の状態」として見えるようになっていました。コンビニバイトの100分の1でも、自分がここに620時間いた理由はお金じゃなかった。そのことが、数字を出したことで逆説的にはっきりしました。
曖昧なまま「なんとなく続けている」のと、「時給61円でも続けている理由がわかって続けている」のは、同じように見えて全然違います。後者になったことで、「やめどき」の判断も逆に冷静にできるようになりました。
正直に言うと、計算する前は少し疲れていました。収益が伸びないことへの焦りよりも、「この作業に意味があるのか」という問いが頭の片隅にずっとありました。
時給を計算したのは、どこかで「やめる理由を探していた」のかもしれません。でも出てきたのは、逆の答えでした。こんなに低い数字のために620時間動いていたなら、それはもうお金じゃない何かに動かされているということだから。
Mさんのアドバイスをそのまま真似して、毎月1回、収益と時間を記録するノートを作りました。最初はスプレッドシートで一行だけ。日付、収益、作業時間、時給の計算結果。それだけです。
最初の月は61円。次の月は74円。その次は58円——機能追加で時間を使いすぎた月でした。3ヶ月経って、傾向として「大きな機能を入れると時給が下がる」ことが見えてきました。それ自体は当たり前のことかもしれませんが、数字で見えると行動が変わります。
もう一つ変えたのは、開発メモの書き方です。「後で自分が見る」ではなく、「誰かに時間の使い方を聞かれたときに答えられるか」を意識するようにしました。
これも地味なことですが、効いています。「なんとなくやってみた」が減り、「この時間は何のためか」が少しずつ言語化できるようになりました。
時給の話を書きながら、ずっと思っていたことがあります。
個人開発って、始めるのも続けるのも、本当は「時給」で測れるものじゃないと思っています。お金が動機じゃないとは言いません。生活がかかれば収益は切実です。でも、それだけだったら620時間は続かなかったと思います。
やめられない理由は、たぶん「自分が作ったものが、誰かの問題を解くのを見たい」という、単純だけどしつこい欲求です。それは時給が61円でも、1,000円になっても、きっと変わらないと思います。
計算をして、低い数字に苦笑いしながら、それでも続ける理由がくっきり見えた夜のことを、しばらく忘れないと思います。
数字を出すのが怖い方、一度やってみてください。怖い思いをするかもしれないけれど、それと同時に、自分がなぜここにいるのかも、少し見えてくるかもしれません。
Lily
Lily(@bokuwalily)― 個人開発者。AIと二人三脚で、iOSアプリやWebサービスを作っています
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Lily(@bokuwalily)― マーケ組織50名規模を統括するCMOを経て、いまは個人でiOSアプリやWebサービスを作っています。集客・導線設計と、AI導入・業務自動化の相談を受けています
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