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アプリ名の後ろに「(β)」という文字を付けたまま、8ヶ月が過ぎていました。 リリースした直後は、それが正直な表示だったと思います。機能はまだ半分以下で、挙動が怪しい箇所もあって、「これは途中です」という意味を込めて付けました。でもその文字は、アプリが少しずつ育っていく中でも消えな…
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Lily さんへの応援になります
アプリ名の後ろに「(β)」という文字を付けたまま、8ヶ月が過ぎていました。 リリースした直後は、それが正直な表示だったと思います。機能はまだ半分以下で、挙動が怪しい箇所もあって、「これは途中です」という意味を込めて付けました。でもその文字は、アプリが少しずつ育っていく中でも消えないまま、ずっと名前の末尾に居座り続けました。 これはその「(β)」を外した日の話です。そして、なぜ8ヶ月もそれを外せなかったのかを、正直に振り返った記事でもあります。個人でものを作っている方なら、きっとどこかで覚えのある感覚があると思って、書くことにしました。
アプリを最初にリリースしたのは、去年の1月のことです。「もう少し待てば完成するのに」と思いながら、気持ちが先行してとにかく出してしまいました。
ユーザー登録はできる。でも通知機能はまだ動いていない。プロフィール画像のアップロードはエラーが出ることがある。そういう状態でした。
だからその時点では「(β)」は正直な表示でした。「完成していません、使えるかもしれないけど保証はしません」という意味を込めた、ある種の前置き。あれは必要な表示だったと、今でも思っています。
問題はそこからです。
4月には通知機能が動くようになりました。バグもだいぶ潰れて、知人に使ってもらったら「普通に使えるよ」と言ってもらえました。でも「(β)」は外しませんでした。
「もう少し磨いてから」「次のアップデートで」「全部揃ってから」。そういう理由を、自分の中で繰り返していました。
転機になったのは、同じコミュニティで知り合った別の個人開発者、Kさん(仮名)の話を聞いた時です。
Kさんは自分のサービスを3年間運営していて、その間ずっとランディングページに「現在β版を提供中」と書いていたそうです。ある日、長く使ってくれていたユーザーから「このサービス、まだ試験中なんですか? 安心して使っていいのかわからなくて」というメッセージが届いたと言っていました。
Kさんは「その瞬間に気づいたんです。私は守られてるつもりだったけど、ユーザーに『完成してないもの』を押しつけていた」と話してくれました。
その話を聞いた時、私は別の話として聞いていませんでした。自分のことを言われているみたいで、少し背中が痛くなりました。その日から、「(β)」を外すことを真剣に考え始めました。
Kさんの話を聞いてから、自分のアプリのページをあらためて見ました。
「(β)」という文字が、名前の末尾にある。そこに目が止まった瞬間、ようやく正直になれた気がしました。
私はあの文字を「謙虚さの表れ」だと思っていました。でも実際は違った。「まだ途中だから批判されても仕方ない」「完成前だから失敗じゃない」という、心のガードでした。ユーザーに言い訳を先に差し出していた。
それが「逃げ」だったと気づくのに、8ヶ月かかりました。
「(β)」を外すということは、「これで完成です」と宣言することだと、無意識に思っていたようです。
完成を宣言したら、批判を受け止める盾がなくなる。「使いにくい」と言われたら、言い訳ができない。そういう怖さが、あの文字を外させなかった理由でした。
でも冷静に考えると、「β版」という表示が批判を防いでくれたことは一度もありませんでした。使い心地が悪ければ人は離れるし、βと書いてあっても関係ない。ユーザーにとっては「動くかどうか」が全てであって、開発者の心の準備とは別の話でした。
もうひとつ気づいたことがあります。私には「完成」の定義がありませんでした。
「次の機能が入ったら」「デザインが整ったら」「もう少しスムーズになったら」。そういう条件が常にあって、それを達成してもまた次の条件が生まれる。だから「完成しました」と言える日は、永遠に来ないようになっていました。
これは「こだわり」じゃなくて、ただの先延ばしです。自分で自分の足を止めている形でした。
Kさんの話を聞いてから2週間後の夜、何かを決意したわけでもなく、ただ静かにアプリ名を編集しました。「(β)」を選択して、deleteキーを押した。
それだけのことです。
大げさな感動はありませんでした。「よし、やった」という達成感もなかった。ただ少し、ひっかかりが取れたような感覚があって、それが逆に正直な感触でした。
特にドラマチックなことは起きませんでした。ユーザーが急に増えたわけでも、レビューが来たわけでもない。
でも一つだけ、変わったことがありました。自分のアプリを人に紹介する時の気持ちが変わったんです。「一応リリースしてるんですけど、まだβで」という前置きをしなくなりました。「こういうアプリを作っています」と、そのまま言えるようになった。
たった数文字を消しただけで、自分の中の何かが変わりました。
個人開発をしていると、「まだ途中ですから」という言い方を自然とするようになります。それ自体は悪くないと思います。本当に途中の時は、正直にそう言うべきです。
でも「途中」という表現が、批判を事前に回避するための防衛として機能し始めた時、それは謙虚さではなくなります。
自分のものを出すのは、怖いことです。批判されるかもしれない。無視されるかもしれない。「こんなの誰が使うの?」と思われるかもしれない。その怖さと戦いながら作っているのは、個人開発者なら誰でも同じだと思います。だからこそ、怖さを和らげるための「ガード」を持ちたくなる気持ちは、わかります。
でも、そのガードがあなた自身の前に進む足を止めているなら、一度外してみる価値があるかもしれません。
私がその後やったのは、「完成の定義を書く」という小さな作業です。
ノートに「これが全部できていたら、このアプリは完成とする」という条件を5つだけ書きました。5つに絞ったのは、絞らないとまた無限に増えるからです。
そのリストを作ることで、「まだ途中」という感覚が少し変わりました。「何がまだで、何は終わっているか」がはっきりした。それだけで、アプリへの接し方が落ち着きました。
「(β)」を外してから2ヶ月が経ちます。ユーザー数が劇的に変わったわけではないし、アプリが突然完璧になったわけでもありません。
でも後悔はしていません。
あの文字を外したのは、アプリへの誠実さであると同時に、自分自身への誠実さでもあったと思っています。「これが私の作ったものです」と、ちゃんと言える状態になれた。それが一番大事なことだったと、今は思えます。
もしこれを読んでいる方の中に、アプリ名やサービス名に「(β)」「(仮)」「試験版」という文字を長く付け続けている方がいれば、一度だけ聞いてみてほしいことがあります。
その文字は、まだ必要ですか?
必要な理由が「まだ機能が足りないから」であれば、そのままでいいと思います。でも「批判されるのが怖いから」「何かあった時の言い訳にしたいから」という理由が少しでもあるなら、その文字はもう役目を終えているかもしれません。
私がそうだったように。
外すのは、5分もかかりません。でもその5分が、何かを変えることがあります。少なくとも私には、そうでした。
Lily(@bokuwalily)― 個人開発者。AIと二人三脚で、iOSアプリやWebサービスを作っています
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Lily(@bokuwalily)― マーケ組織50名規模を統括するCMOを経て、いまは個人でiOSアプリやWebサービスを作っています。集客・導線設計と、AI導入・業務自動化の相談を受けています
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