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「チップをリクエスト」で著者にチップの受け取り設定をお願いできます

エッセイを書きます。 開いたくない画面がある、とずっと思っていました。 解約したユーザーのコメント一覧。ダッシュボードの隅にひっそりあって、でも数字だけは毎月じわじわと増えていく。先月は17件でした。そのうち何人がテキストを残してくれているかは、開けば一秒でわかる。それなのにわた…
この記事が良かったら
「チップをリクエスト」で著者にチップの受け取り設定をお願いできます
エッセイを書きます。 開いたくない画面がある、とずっと思っていました。 解約したユーザーのコメント一覧。ダッシュボードの隅にひっそりあって、でも数字だけは毎月じわじわと増えていく。先月は17件でした。そのうち何人がテキストを残してくれているかは、開けば一秒でわかる。それなのにわたしは、何ヶ月もそこをクリックせずにいました。 怖いというより、「読んで傷つく準備がまだできていない」という状態が続いていた、という感じです。スマホで通知を見るのが嫌で画面を伏せたまま置いておくような、あの感覚に近いかもしれません。今日話したいのは、ある夜にやっとそれを開いて、全部読んで、思いがけないものを受け取った話です。
解約コメントを読まない言い訳として、自分にいくつか言い聞かせていたことがありました。「クレーマーの声だけ集まった偏ったデータだから」「感情的になって判断が歪む」「読んでも何も変えられない」。
今になって思えば、全部、開けない自分を守るための理由づけでした。
本当は単純で、時間をかけて作ったものに「思っていたのと違った」「期待外れだった」と書いてあるのを目で追うのが、嫌だったんです。それだけのことです。わかっていても認めるのに時間がかかる、という種類のことは、個人開発をしていると案外たくさんあります。
7月の終わりに、同じくサブスクのアプリを作っている方がSNSにこんな投稿をしていました。「解約理由を全件スプレッドシートに転記して分析した。そこから機能を3つ絞り込んだ。翌月のアップデートで解約率が少し落ちた」という話でした。
最初は「すごい、どうしてそんなことができるんだろう」と思いました。読んで傷つかないのかな、と。
でも少し経ってから、別の見方ができるような気がしてきました。もしかしてその人は、傷つくかどうかよりも「ここに情報がある」と思って読んでいるんじゃないか。同じテキストを、受け取り方の枠組みがまったく違う状態で読んでいるんじゃないか、と。
その区別が自分にできていたかというと、正直まったくできていませんでした。コメント欄を開く前から「辛いことが書いてある」と決めつけて、そこで完結させていた。開く前に結論を出していたわけです。
その夜、試してみることにしました。「感想を受け取る」ではなく「次に何を作るかのヒントを探す」という目的を意識して持ってから開く、という方法で。声に出して言ってみたらちょっとおかしかったですが、効果はありました。
8月の第一週、深夜を少し回ったあたりで、わたしはやっとダッシュボードを開きました。
17件のコメント欄には、11件にテキストがありました。残りの6件は何も書かれていない、ただの解約でした。
正直に言うと、最初の3件を読んだ時点で閉じそうになりました。「使い方がよくわからなかった」「UIが古い感じがする」「思ったより値段が高かった」。それぞれが刺さりました。「古い感じ」という言葉は特に、しばらく画面から目が離せなくなりました。あのデザインにどれだけ時間をかけたか、その記憶が蘇ってくる感じがして。
でも閉じませんでした。「次に作るものへのヒントを探す」という言葉を小さく繰り返して、次のコメントへ進みました。
4件目に「週に1回しか使わないのに月額は重かった」という一文がありました。読んだ瞬間、ああ、と思いました。使わなかったんじゃなくて、自分の使い方の頻度と料金のバランスが合わなかった。それはわたし側の設計で選べた話だ、と。週次プランを用意するかどうかは以前も少し考えていたのに、面倒で後回しにしていたことでした。
8件目は「機能自体は気に入っていたけど通知が多すぎた」。これは一か月前にも別の経路で似た声があって、「後でやろう」と先送りしていた問題でした。後悔と「これは直せる」という感触が、ほぼ同時に来ました。
1時間ほどかけて全部読みました。読み終わって、意外だったのは、11件の中に「このサービスが嫌いだった」という趣旨のコメントが一件もなかったことです。
「自分の使い方に合わなかった」「タイミングが悪かった」「ある機能が足りなかった」。どれも、わたしが何かを変えれば結果が違った可能性のある話でした。全員がそうとは思わないけれど、そう読めるコメントが半分以上ありました。
翌朝、コメントから出てきた言葉を付箋ツールに転記する作業をしました。感想や解釈は書かない、「言葉だけ」を写す、というルールで。
「週1回利用者向けのプラン」「通知の細かい調整設定」「初回の説明が短すぎる(同趣旨が3件)」「〇〇との連携がほしかった」……書き出したら10個になりました。そのうち7つは、以前から「なんとなく後でやろう」とぼんやり思っていたものでした。
このメモを見て、次のアップデートの予定を入れ替えました。「新しい機能を追加する」という元々の計画を後ろに回して、「通知設定の追加」と「オンボーディングの改善」を先にやることにしました。
これが正解かどうかは、まだわかりません。解約した方が戻ってくるわけでもないし、次の解約が止まる保証もない。でも少なくとも、誰かが実際に口にした言葉を根拠にした判断です。「なんとなくこれがいい気がする」とは、根拠の種類が違います。それだけで、少し落ち着いた気持ちで着手できました。
言い方が大げさかもしれませんが、今はそう思っています。
去っていく人がわざわざ言葉を残していくのは、なぜだろうと考えました。ただ不満を吐き出したい人もいると思います。でも「こういう機能があれば使い続けた」と書いてくれた人は、たぶんもう少しだけ使いたかった人です。去りながら、次の作り手に何かを渡そうとしてくれた人かもしれない。
そういう言葉を、読まずに置いていた。もったいなかったな、と今は思います。
傷つくのが嫌だから読まない、という気持ちはわかります。わたしもずっとそうでした。でも読まないでいると、何を直せばいいかがわからないまま、次のリリースを出し続けることになります。それはそれで、別の種類の怖さがあります。どこへ向かっているかわからないまま走り続けている感じ、とでもいうか。
個人開発をしていると、「次に何を作るか」を一人で決めないといけない場面が多くあります。参照できるデータが少ないし、チームで議論する相手もいないし、「これで正しいのか」という問いに答えてくれる人がいない。そういう孤独さは、どれだけ慣れても少し残ります。
解約コメントは、そういう意味で、地図の一つになれると思いました。完全な地図ではないし、読み始める前に少し勇気がいる地図ですが、それでも何もないところに線を引いてくれる何かです。
来月もきっと件数は増えます。そのうちの何件かには言葉がある。次は、もう少し早く開こうと思っています。傷つきに行くのではなく、受け取りに行くつもりで。
Lily(@bokuwalily)― 個人開発者。AIと二人三脚で、iOSアプリやWebサービスを作っています
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Lily(@bokuwalily)― 個人開発者 / AI導入・業務自動化のコンサルタント。AIと二人三脚でiOSアプリやWebサービスを作りながら、企業のAI導入と自動化の相談を受けています
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