この記事が良かったら
「チップをリクエスト」で著者にチップの受け取り設定をお願いできます

個人開発を始めてしばらく経ったころ、Lilyはふと気づきました。何週間も、誰にも声をかけていないという事実に。リリースしても反応はゼロ。作業中に詰まっても相談できる相手がいない。開いたSlackには自分の投稿だけが並んでいる。それが普通のことだとわかっていても、夜中に一人でコード…
この記事が良かったら
「チップをリクエスト」で著者にチップの受け取り設定をお願いできます
個人開発を始めてしばらく経ったころ、Lilyはふと気づきました。何週間も、誰にも声をかけていないという事実に。リリースしても反応はゼロ。作業中に詰まっても相談できる相手がいない。開いたSlackには自分の投稿だけが並んでいる。それが普通のことだとわかっていても、夜中に一人でコードを書いていると、どこか遠くから「この時間、意味あるのかな」という声が聞こえてくる気がしました。
この記事は技術の話ではありません。個人開発をしているLilyが、孤独とどう向き合ってきたかを正直に書いたものです。うまくいった話だけではなく、すっかり萎えた時期の話も、恥ずかしい失敗も、そのままにしておきます。同じように一人で作っているあなたに、「あ、私もそういう時期あったな」と少し感じてもらえたら嬉しいです。
孤独が完全に消えたわけではありません。今でも「この話、誰かにしたいな」と思うことはあります。でも、孤独と戦うのをやめてから、少しだけ楽に続けられるようになりました。その過程で気づいたことを、できるだけ素直に書きます。
正直に告白します。最初にプロダクトをリリースした日、Lilyはけっこう気合を入れていました。告知の文章を何度も書き直して、タイミングを計って、「よし、これで届く」と信じて投稿しました。
結果は、いいね0でした。PVは3。おそらく全部自分です。
今ならちょっと笑いながら話せますが、当時は本当に落ち込みました。1か月以上かけて作ったものが、誰の目にも留まらなかったという事実が、思っていたよりずっしりきました。「自分の作るものに、そもそも需要がないのかな」と思い始めて、しばらく開発の手が止まりました。
その後、2週間くらい別のことをしていて、気持ちが落ち着いてから振り返ってみました。そうしたら、「誰にも届かなかった理由」が少しずつ見えてきました。告知の文章が弱かった。何の問題を解決するツールなのか、全然伝わっていなかった。どんな人に向けたのかも曖昧だった。
つまり、プロダクト自体の問題というよりは、「届け方」の問題が大きかったんです。それがわかったことで、「価値がない」という思い込みから少し抜け出せました。でも、この気づきに一人で到達するまでに2週間かかりました。誰かが隣にいたら、もっと早く立ち直れていたかもしれない、とも思います。孤独の中で傷つくと、回復にも時間がかかる。それがよくわかった最初の経験でした。
個人開発で一番きついのは何ですか、と聞かれたら、Lilyは「詰まっても相談できる人がいないこと」と答えます。締め切りが自分で決まること、お金になるかどうかわからないこと、もちろんそれも大変です。でも、もっと地味につらいのは、判断を全部一人でしないといけないことです。
技術的な行き詰まりは、まだ対処しやすいです。調べれば出てくることも多いし、コミュニティで聞けることもある。でも、方向性の問題はそうはいきません。「これ、続ける意味あるのかな」「ユーザーに刺さっているのかな」「UIの流れ、本当に直感的なのかな」——こういう問いは、誰かと話してみないとなかなか答えが出ません。でも、話す相手がいない。
Lilyが実際に経験した失敗があります。方向性をほとんど誰にも見せないまま、3か月開発を続けたことがあります。自分の中では着実に進んでいる感覚がありました。完成が近づいてきたタイミングで、知人に初めて見せたら、「これ、もうあるよね?」と言われました。競合に気づいていなかったわけではないんですが、「自分のは違う」という思い込みがあって、ちゃんと調べていなかった。3か月分のモチベーションが、ずるっと崩れた感覚でした。
一人の視野は、思っている以上に狭いです。これは能力の問題ではなく、構造の問題です。外からフィードバックを受けない環境では、自分の認知の歪みに気づきにくい。孤独の怖さは、「寂しい」という感情だけじゃなくて、「偏った判断に気づけない」という実害もある、ということを、このときに実感しました。
反応がなく、相談もできず、そのうち「コミュニティに入ればいいんだ」という答えに行き着きました。Lilyも同じです。いくつかのDiscordサーバーやオンラインコミュニティに参加しました。
でも、はじめはうまくいきませんでした。
コミュニティの雰囲気をつかめなくて、発言のタイミングが読めない。自分のプロダクトを投稿していいのか、どんな温度感で話せばいいのか、よくわからない。他の人の「リリースしました!」「ユーザーが増えました!」という投稿を見て、すごいなと思いながら、どこかで焦りと落差を感じる。孤独を解消しようとして、かえって自己嫌悪が増えるという、なんとも皮肉な状態になりました。
「コミュニティにも溶け込めない自分も問題なのか」とまで思い始めたあたりで、一度立ち止まりました。そして、関わり方を根本から変えました。
「ここで認めてもらおう」「仲間を作ろう」「承認を得よう」という期待を、ぜんぶいったん手放す。「見るだけでいい」「読んで、ああ同じことで悩んでいる人がいるんだ、とわかるだけでいい」というスタンスにしました。
そうしたら、だいぶ楽になりました。コミュニティを「孤独を解消する場所」ではなく、「同じ状況の人間が存在すると確認できる場所」として使うようになりました。それだけでも、思っていたよりずっと効果がありました。
外から反応をもらおうとするよりも、「自分の内側に小さなフィードバックループを作る」ことのほうが、孤独な開発を長続きさせるうえで安定する。これがLilyの現時点での結論です。
具体的にやっていることがあります。
まず、作業ログをつけることです。毎日じゃなくていい。「今日、何をやった」「どこで詰まって、どう乗り越えた」を、5行でもいいから書いておきます。後から読み返すと、「あ、自分は確かに進んでいた」と客観的にわかります。外から反応がなくても、自分が記録した事実は消えません。それが、静かな支えになります。
次に、週に一度だけ「振り返りメモ」を書くことです。できたこと、できなかったこと、今気になっていること。誰かに見せるわけでも、公開するわけでもなくていい。自分だけの対話として書くと、「ああ、今週はこういう状態だったんだな」と少し俯瞰できます。頭の中だけで考え続けていると、同じことをぐるぐるしやすい。一度文字にすると、少し前に進めます。
あとは、完成じゃなくて「動くもの」を早く作るようにしました。誰にも見せない段階でも、画面に自分の作ったものが動いた瞬間、「よし」という感覚があります。その小さな達成感を、次の一歩の燃料にしています。これが今のところ、一番続けやすい仕組みです。
作ったものを外に出すことへの恐怖と、孤独な感情は、意外と絡み合っています。「どうせ誰にも反応されない」という予感があると、出すこと自体が億劫になる。出さないから反応がない。その繰り返しで、どんどん内向きになっていきます。
Lilyがそこから抜け出すために意識したのは、「届けるために出す」より前に、「記録として出す」というスタンスを持つことでした。
バズらなくていい。誰かのタイムラインに流れなくていい。「この時点で、自分はこれを作っていた」という事実を、インターネット上に置いておく。それだけを目的にする。そう考えたら、公開のハードルが下がりました。
それに、ゼロ反応だった投稿が、半年後に誰かに読まれることがあります。「あのとき読みました」と言われることもあります。即座な反応がなかったからといって、「誰にも届かなかった」とは限らない。時間差があるだけで、蓄積されていることもある。そのことが実感できるようになってから、反応を気にしながら出すよりも、出し続けることに軸足を置けるようになりました。
今のLilyは、孤独を「解消すべき問題」として扱っていません。一人で作ることの孤独は、おそらく完全には消えません。でも、孤独と戦わなくなってから、消耗の仕方が変わりました。
孤独を「問題」として扱っていた頃は、「コミュニティに入らないといけない」「発信しなければいけない」「誰かに認めてもらわないといけない」という、自分で作った義務感に追われていました。開発するエネルギーより、孤独を埋めようとするエネルギーのほうが大きくなっていました。それ自体が、かなり消耗していたと思います。
今は、作ること自体が自分にとっての理由になっています。誰かに届いたら、それは嬉しいボーナスです。届かなかったとしても、自分が動かしたものが画面に存在している。その事実だけで、続けていける気がします。
一人で開発しているあなたへ。孤独を感じることは、弱さでも失敗でもないです。それはただ、その状況の自然な結果です。孤独は消えないかもしれないけれど、孤独なまま続けることは、できます。Lilyはそれを、少しずつ実感しています。まだ作り続けています。
Lily(@bokuwalily)― 個人開発者。AIと二人三脚で、iOSアプリやWebサービスを作っています