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「チップをリクエスト」で著者にチップの受け取り設定をお願いできます

先週末のことを、正直に書いてみようと思います。 ちゃんと文字にすると少し恥ずかしいのですが、あの2日間、私は本気で「このプロダクトをやめようか」と考えていました。ピボット、というよりはほとんど撤退に近い気持ちです。SNSを開くのがつらくて、コミュニティのチャンネルもミュートにして…
この記事が良かったら
「チップをリクエスト」で著者にチップの受け取り設定をお願いできます
先週末のことを、正直に書いてみようと思います。 ちゃんと文字にすると少し恥ずかしいのですが、あの2日間、私は本気で「このプロダクトをやめようか」と考えていました。ピボット、というよりはほとんど撤退に近い気持ちです。SNSを開くのがつらくて、コミュニティのチャンネルもミュートにして、ひたすらPCの前でぼんやりしていました。 こういう週末は、個人開発をしているとたぶん誰にでも来ると思います。だからこそ、あのときに自分が何を考えて、どこを通って前を向けたのかを、記録として残しておきたくて書くことにしました。今まさに同じような空気の中にいる人がいたら、この文章が少しでも「一緒にいる」ような感じになれたら嬉しいです。うまくいく話でも、答えが出る話でもないですが、それでもあの週末は確かに何かが変わった時間でした。
その週は、じわじわと調子が悪い1週間でした。
直近のリリースの反応がほぼなく、数字がまったく動いていませんでした。ユーザー数が増えない、フィードバックも来ない、というよりそもそも誰も触ってくれている感じがしない。「届いていない」というのが正確なところで、それがじわじわと積み重なっていました。
金曜の夜、なんとなくSNSをスクロールしていたら、自分とほぼ同じ時期に個人開発を始めた人が、すごい勢いで伸びているのを目にしました。ユーザー数の公開、収益のグラフ、メディアへの掲載。見なければよかったのに、画面を閉じられなくて、気づいたらしばらく眺めていました。
比べることがよくないとは、頭ではわかっています。でも疲れた状態の夜にやってしまうと最悪で、「あの人が伸びているなら、自分の方向性が間違っているんだ」という根拠のない飛躍した結論に、一直線に向かってしまいます。気づいたら深夜の2時を回っていて、ノートアプリにピボット候補を10個くらい書き出していました。書くことで何かが解決するわけじゃないのに、書かずにはいられなくて。
翌朝、土曜日。気持ちは引き続き重かったのですが、思い切って外に出ることにしました。近くの公園に向かって、ゆっくり1時間くらい歩きました。スマホはポケットに入れたまま、音楽もなしで。
「ピボットするかどうか」ではなく、「そもそも自分はなんでこれを作っていたんだっけ」という問いを持って歩きました。答えを出そうとするのではなく、ただその問いを頭に置いて歩く。何も解決しないかもしれないけれど、頭と体を動かすことで少し整理されるかもしれない、という感じで出かけました。
家に帰ってから、ノートに向かいました。ピボット候補のリストではなくて、「なぜこれを作り始めたか」を書き出すことにしました。
最初は思い出せなくて、数行でつまってしまいました。でもそのまま手を動かしていたら、少しずつ記憶が戻ってきました。このプロダクトの種になったアイデアを思いついた瞬間のこと。「これができたら、ある人の何かが楽になりそうだな」と感じたときのこと。あの日の夜、なぜか眠れなかったこと。
書いているうちに、気持ちが少しずつ落ち着いてきました。数字の話でも競合との比較でもなく、ただ「最初の自分が何を感じていたか」という場所に戻れた感じで。その時間が、思っていたよりずっと落ち着く作業でした。
夕方になって、金曜夜に書いたピボット候補のリストを見返しました。
10個ほど書いてあって、読み返してみると「これ、数字が伸びている人と同じジャンルにしようとしているだけだな」というものが半分以上ありました。焦っている夜に書いたものだから当然で、それはピボットではなく「比較から生まれた逃げ」でした。自分の内側から出てきたアイデアじゃなくて、誰かの成功を見て反射的に書いたもの。並べてみると、そのちがいがはっきりわかりました。
残りのアイデアは、前からどこかで「面白いかも」と思っていたものが混じっていました。それ自体は悪くありません。でも今のプロダクトとの整合性を考えると、「今やる理由」がまだはっきりしていませんでした。
そのとき気づいたのは、「ピボットが悪い」ということではなくて、「今の自分はピボットの判断ができる状態ではなかった」ということです。疲れていて、焦っていて、他の人と比べていた状態で出した答えは、たいてい後で後悔します。少なくとも自分はそうなることが多いです。ピボットの判断をするにしても、もう少しフラットな状態のときにするべきだと思いました。判断を一週間先送りにするだけで、だいぶちがう目で見られることもあります。
日曜日は、作業を一切やめることにしました。
その代わり、今のプロダクトについて書く日にしました。「誰の何を解決しようとしているか」を、自分の言葉でテキストに書き直す。ユーザー数のことはいったん横に置いて、ただ定義する。整理する。それだけに集中しました。実装もデザインもSNSも全部閉じて、ノートだけを開いていました。
書いているうちに、3つのことが見えてきました。
ひとつは、ターゲットの解像度が低かったということです。「こういう人に使ってほしい」のイメージが自分の中でふわっとしていて、それが伝わりにくさの根本にある気がしました。誰にでも届こうとしているものは、誰にも刺さらないということを、改めて感じました。作るときは「広く届けたい」という気持ちで機能を足してしまいがちですが、届ける相手のイメージを絞ることのほうが大事だったのかもしれません。
もうひとつは、コアにしたかった機能がUIの中で見つけにくい場所にあったということです。作った自分にはわかりますが、初めて触れる人の目線では埋もれてしまうかもしれません。「自分が一番好きな機能を、ちゃんと前に出せていなかった」ということです。
3つ目が、一番意外でした。書いているうちに、「自分はこのプロダクトのことが、まだ好きだ」ということがはっきりわかったんです。向き合って言葉にしていたら、それが伝わってきました。やめたくないから迷っていたんだと、そこで初めて気づきました。悩んでいた正体が、愛着だったということです。
日曜日の整理を受けて、月曜日から少しだけ動きました。大きくは変えない、でも解像度が上がった分だけ直す。そういうイメージです。
ランディングページのコピーを1行だけ書き直しました。ターゲットのイメージを絞った分、刺さる人には刺さる言葉に変えました。機能の見せ方も少し変えて、自分が一番好きな機能が最初に目に入るようにしました。スクリーンショットも撮り直して、説明の順番を入れ替えました。
全部で2時間もかかりませんでした。作業量としては小さいですが、「自分の解像度が上がったからできた変更」という感触があって、やってよかったと思っています。ピボットではなく、今あるものを「自分がちゃんと理解できた状態で整える」という感じでした。あの週末がなければ、この変更には気づけなかったと思います。
今振り返ると、あの2日間が「一番プロダクトと深く向き合えた時間だったな」と感じています。
数字が動いているときって、立ち止まりにくいんですよね。動いているからとにかく前へ前へとなります。立ち止まらざるを得なかったからこそ、「なんでこれを作っているか」「誰のためか」「何が伝わっていないか」をちゃんと言語化できた気がしています。立ち止まることは、停滞ではなかったと今は思います。むしろ、走りながらではできない種類の整理でした。
ピボットすること自体は悪くないと思います。でもあのとき私に必要だったのは、ピボットではなく、今作っているものと正面から向き合う時間でした。迷いから逃げるのではなく、迷いの中身を全部書き出して、向き合ってみること。それだけで、だいぶちがいました。
もし今週末、同じような気持ちで過ごしているソロ開発者の人がいたら、ひとつだけ提案させてください。
判断は来週でいいです。今週末は、「自分はなんでこれを作ったんだっけ」という問いを持って、ただ書き出してみるだけでいいと思います。答えは出なくてもいい。でも書いているうちに、出てきた言葉の中に、きっとヒントがあります。Lilyはそうでした。
Lily(@bokuwalily)― 個人開発者。AIと二人三脚で、iOSアプリやWebサービスを作っています