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「チップをリクエスト」で著者にチップの受け取り設定をお願いできます

アプリを公開してから、ずっと気になっていることがあります。 バグを踏んだとき、何も言わずに去っていく人のことです。エラー画面が出ても、ボタンが動かなくても、アンケートに書いてくれるわけでもなく、SNSで怒るわけでもなく、ただ静かに消えていく。そういう人のことは、画面のむこうで永遠…
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「チップをリクエスト」で著者にチップの受け取り設定をお願いできます
アプリを公開してから、ずっと気になっていることがあります。 バグを踏んだとき、何も言わずに去っていく人のことです。エラー画面が出ても、ボタンが動かなくても、アンケートに書いてくれるわけでもなく、SNSで怒るわけでもなく、ただ静かに消えていく。そういう人のことは、画面のむこうで永遠にわからないまま終わります。どれだけ気にかけようとしても、去ったあとでは何もできない。 でも最近、逆のパターンがあることに気づきました。何も言わずに去るのではなく、何も言わずに使い続けてくれる人。バグも、使いにくさも、ひとことも言わずに受け止めて、それでも毎週ログインしてきてくれる人が、ちゃんとそこにいた。今日は、そのことについて書かせてください。
リリースから11ヶ月が経ったころ、ダッシュボードのログを整理していたときのことです。特定のユーザーIDが、毎週ほぼ欠かさずアプリを開いているのを見つけました。それだけなら「よかった、続けて使ってくれている」で終わるはずでした。
でも、そのIDの行動ログを追っていくと、妙なことに気がつきました。エラーが出ていたんです。ページ遷移のたびに同じエラーが発生して、毎回リトライして、それでも使い続けている。
エラーの原因はLilyの実装ミスで、ある操作をするたびに処理が中途半端な状態になる設計上の穴でした。Lilyがそのバグを発見して修正したのはログを遡ると3週間後のことで、そのあいだ、このユーザーはエラーを踏みながら毎週アプリを使い続けていたことになります。
問い合わせは一件もありませんでした。レビューにも何も書かれていませんでした。Lilyは問題が起きていることすら知らずにいました。
最初は「エラーに気づいていなかったのかな」と思いました。でもログを見るかぎり、エラー画面は確実に表示されていたはずです。知っていて、それでも来てくれていた。その事実が、しばらく頭から離れませんでした。
正直に言うと、Lilyにはずっと思い込みがありました。「問い合わせがなければ、問題なし」という考え方です。
個人開発だと、ユーザーからのフィードバックはとても貴重です。要望を送ってくれる人、レビューに書いてくれる人、バグを丁寧に報告してくれる人。そういう声はモチベーションになるし、改善の方向を教えてくれる。Lilyも、そういった声を大切にしてきました。
でも、その一方で「問い合わせゼロ=問題ゼロ」という等号を、あまりにも自然に置いていた気がします。
調べてみると、ユーザーの多くは問題があっても問い合わせをしない、という話はよく知られているようです。個人開発のアプリならなおさらで、「運営が一人だとわかっているから気が引ける」「言っても直してもらえないかもしれない」「そもそもどこに報告すればいいかわからない」という理由で、黙っていることを選ぶ人がたくさんいる。
つまり、声を上げてくれる人だけを見ていると、使っているほとんどの人のことが見えていないままになる。当たり前のことなんですが、改めて言葉にすると、少し怖くなります。
と同時に、沈黙にはいろんな意味があることも考えるようになりました。
ひとつは諦め。「どうせ直してくれないから言っても無駄」という気持ちからくる沈黙。もうひとつは遠慮。「小さなことで手を煩わせたくない」という気持ち。そして、信頼からくる沈黙もあると思います。「この人は気づいてくれる」「ちゃんと直してくれる」という、言葉にならない期待。
外から見ると、どれも同じゼロ件です。
あのユーザーIDを追ったとき、Lilyが感じたのは三番目でした。根拠があるわけじゃないですが、確信に近いものがありました。11ヶ月間、毎週戻ってくるという行動そのものが、答えだった気がして。
この気づきから、Lilyは具体的に二つのことを変えました。大きな方針転換ではなく、本当に小さな習慣の変化です。
ひとつ目は、エラーログを「週に一度、人として読む」ようにしたことです。
以前はエラーが頻発したときだけログを開いていました。でもそれだと、声を上げない人が踏んでいる問題は永遠に見えてこない。今は週末に30分ほど、エラーログをユーザー単位でまとめて、誰がどんな文脈でつまずいているかを追うようにしています。数字の羅列として読むのではなく、「この人は何を使おうとしていたんだろう」という問いを持ちながら読む。そうすると、同じデータが少し違って見えてきます。
もうひとつは、バグを直したときのリリースノートの書き方を変えたことです。
以前は「バグ修正」の一行で終わらせていました。今は「〇〇の操作でエラーが出る問題を修正しました。気づいてくださっていた方、ありがとうございます」という形で書くようにしています。
問い合わせがなくても「気づいてくださった方」と書くのは、少し変に見えるかもしれません。でも、声を上げなかった人にも届くリリースノートを書きたかったんです。バグを踏みながら使い続けてくれていた人が読んだとき、「ちゃんと直ったんだ」と思ってもらえるように。感謝は、受け取ってもらえなくても書く価値があると思っています。
個人開発をしていると、反応があった日とない日でモチベーションが大きく変わることがあります。レビューが届いた日は「続けてよかった」と思えるし、長いあいだ何も反応がないと「本当に誰かに届いているのかな」という不安に引っ張られる。Lilyもそういう時期を何度か経験してきました。
でも、あの11ヶ月間、毎週ログインしてくれていたユーザーがいた、という事実は、Lilyが知らなかっただけで、ずっとそこにありました。Lilyが揺れていた時間も、不安だった日も、全部含めて。
声にならない感謝というものが、たぶんたくさんあるんだと思います。アプリを開いてくれること自体が、言葉になっていない「ありがとう」かもしれない。使い続けてくれること、また戻ってきてくれること。それを、Lilyはずっとうまく受け取れていませんでした。
クレームゼロをよいサインと読み違えていたのと同じように、無言の継続を「普通のこと」として流していた。そこに信頼が含まれていたとしたら、もったいない見落とし方をしていたと思います。
あのユーザーIDは今も毎週アプリを開いています。Lilyはその人が誰かを知りません。どんな仕事をしているか、どんな理由でアプリを使ってくれているか、エラーを踏んでいたときどんな気持ちだったか、何もわかりません。
ただ、3週間エラーを踏みながら使い続けてくれたこと、一度も文句を言わなかったこと、それでも翌週また来てくれたこと。それだけが、ログの中に静かに残っています。
Lilyが変えたのは、エラーログを人として読む習慣と、リリースノートに感謝を書くようになったこと、それだけです。大げさな変化じゃないですが、この二つはあのユーザーがいなければ気づかなかった。声を上げなかった人が、Lilyの作り方を変えた。
同じように個人開発をしているみなさんのアプリにも、きっと、一度も文句を言わなかった人がいると思います。
その沈黙を、できれば諦めや遠慮だと決めつけないでほしいなと、今は思っています。言葉になっていないだけで、ちゃんと届いているものが、あなたのアプリにもきっとあるはずだから。
Lily(@bokuwalily)― 個人開発者。AIと二人三脚で、iOSアプリやWebサービスを作っています
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Lily(@bokuwalily)― マーケ組織50名規模を統括するCMOを経て、いまは個人でiOSアプリやWebサービスを作っています。集客・導線設計と、AI導入・業務自動化の相談を受けています
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