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「お仕事は何をされているんですか?」 この質問が、長い間ずっと苦手でした。 聞かれるたびに、なんとなく言葉を濁していました。「アプリをちょっと作ったりしています」「趣味みたいなものです」「まあ副業というか……」。笑顔でごまかして、なんとなく話題を変えてもらうのを待っていました。自…
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Lily さんへの応援になります
「お仕事は何をされているんですか?」 この質問が、長い間ずっと苦手でした。 聞かれるたびに、なんとなく言葉を濁していました。「アプリをちょっと作ったりしています」「趣味みたいなものです」「まあ副業というか……」。笑顔でごまかして、なんとなく話題を変えてもらうのを待っていました。自分でアプリを作って公開して、実際に使ってもらって、収益もある。それでも「仕事です」とはどうしても言えなかった。言っていいのか、わからなかったから。 今日はその話を書きます。「仕事です」と言えるようになるまでに何があって、何が変わったのか。大きな転機があったわけではないし、誰かに背中を押してもらったわけでもありません。でも確かに、何かが変わりました。
あの頃、なぜ「仕事です」と言えなかったのか。今になって振り返ると、いくつかの理由が見えてきます。
個人開発をはじめてすぐの頃、Lilyは普通に会社員でした。昼間は会社で働いて、夜や週末にコードを書いていました。「趣味」と言うのはそれが正確だったからで、別に謙遜でも何でもありませんでした。
でもある時期から、個人開発の比重が少しずつ増えていきました。収益が出はじめて、時間も増やして、それが本業の収入に近づいてきた頃、急に「なんて説明すればいいんだろう」と困りはじめました。会社員ではない。でも個人事業主という実感もない。「フリーランス」という言葉も、デザイナーやエンジニアが受注仕事をするイメージで、なんか違う気がしていました。自分が何者なのかがわからなくて、だから説明もできなかった。
もう一つの理由は、もっとシンプルで、もっと根深いものでした。
「仕事です」と言うと、相手は当然「どんな仕事?」「どのくらい稼いでいるの?」と聞いてくる。その答えを話すたびに、「思ってたより小さい話だな」と思われたらどうしよう、という怖さがありました。月に数万円。ダウンロード数もそこまで多くない。有名なサービスでもない。それを「仕事」と言い張るのは、なんだか大げさな気がして、恥ずかしかった。
でも今思えば、これは自分で自分の仕事を値引きしていた行為でした。
言い訳をたくさん並べてきましたが、「仕事です」と言えるようになった転機は、実はとても地味な出来事でした。
あの日は、ユーザーからのメッセージを確認していました。レビューでも問い合わせでもなく、ただのメモに残していた一通のメッセージです。「仕事で毎日使っています。本当に助かっています。作ってくれてありがとう」という内容でした。
送ってきたのは、名前も顔も知らない誰かです。Lilyのことを何も知らない人が、Lilyが作ったものを、仕事で、毎日、使っている。
その夜、なんだかぼんやり考えました。これは趣味で作ったもので、趣味でメンテしていますが、あの人にとっては仕事道具なんだ、と。趣味と仕事の境界線って、作った側ではなく、使う側にあるのかもしれない、と。
同じ頃、久しぶりに会った友人に近況を話しました。そのときも「趣味でちょっとアプリを……」と話しはじめたのですが、途中で友人に遮られました。「え、それって会社とかじゃなくて、全部自分でやってるの?使ってる人もいるの?お金も入ってくるの?」と立て続けに聞かれて。
「うん、まあ……」と答えると、「普通にすごいじゃん」と言われました。
社交辞令だったかもしれません。でもその言葉が妙に刺さったのは、自分が「すごいじゃん」と思えていなかったからだと、そのとき気づきました。自分の仕事を、自分が一番低く見ていたんです。
転機の後も、すぐに言えるようになったわけではありませんでした。
何度か練習しました。練習、というと変ですが、本当にそんな感じでした。鏡の前とかじゃなく、頭の中で「もし聞かれたら何と答えようか」を繰り返して考えていました。
「アプリを個人で開発・運営しています」。
この言い方を何度も頭の中で転がして、ある日、初対面の人に自然と言えていました。「仕事は個人開発をしています」と。
相手は「へえ、どんなアプリ?」と聞いてきて、Lilyは説明して、「面白いね」と言われて、会話が続きました。怖れていた「思ってたより小さい話だな」という反応は来なかったし、来たとしてもそれはその人の感想であって、仕事の価値を決めるものでも何でもなかったんです。
「仕事です」と言えるようになってから、小さな変化がいくつか起きました。
以前は話さなかったような場面でも、個人開発の話をするようになりました。飲み会で、雑談で、SNSのプロフィールで。するとフィードバックが増えました。「そういうアプリ探してた」「こんな機能があったら使いたい」「友人に紹介した」という声が来るようになりました。2024年秋に公開したアプリは、公開から3ヶ月でダウンロード数が当初の想定の2倍を超えました。話すようになったことが直接のきっかけかどうかはわかりませんが、無関係でもないと思っています。
「趣味」だと思っていた頃は、機能を追加するときも、ユーザーからの要望への返答も、なんとなくその場の気分で決めていました。「気が向いたら対応しよう」という感覚です。
「仕事」だと思いはじめてから、判断の仕方が変わりました。これはユーザーにとってどうか、長期的にアプリにとってどうか、という視点が自然と入るようになりました。要望を断るときも、きちんと自分の言葉で断れるようになりました(これについては以前別の記事で詳しく書いたことがあります)。
この記事を書きながら、ずっと考えていたことがあります。
「仕事です」と言える条件って、何なんでしょうか。月収いくら以上?ユーザー数何人以上?法人化しているかどうか?
Lilyは今でも明確な答えを持っていません。でも今は「それを決めるのは自分だ」という気持ちがあります。誰かに認定してもらう必要はない。会社に所属していなくても、フォロワーが多くなくても、有名でなくても、自分が「これは仕事だ」と決めていい。逆に言えば、誰も「あなたは名乗っていい」とは言ってくれない。自分で決めるしかない。
個人開発をしていると、この「自分で決める」場面が本当に多いです。機能を入れるかどうかも、価格を決めるのも、続けるかやめるかも、全部自分。「仕事です」と名乗るかどうかも、その一つでしかありません。
最近また「お仕事は?」と聞かれる機会がありました。
「個人でアプリを開発・運営しています」
すっと言えました。相手が「えっ、全部一人で?」と少し驚いた顔をして、それがちょっと嬉しかった。
あの頃の「趣味でちょっと……」という言い方が悪かったとは思っていません。あの時期はあれが正直なところでした。でも今は、今の言い方が正直なところです。
もし今「趣味でちょっと……」と答えてしまっているかたがいたら、一度だけ、心の中で言い換えてみてください。「仕事でやっています」と。怖かったら心の中だけで大丈夫です。Lilyもそこから始めました。
いつか、自然と口から出る日が来ます。
Lily(@bokuwalily)― 個人開発者。AIと二人三脚で、iOSアプリやWebサービスを作っています
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Lily(@bokuwalily)― マーケ組織50名規模を統括するCMOを経て、いまは個人でiOSアプリやWebサービスを作っています。集客・導線設計と、AI導入・業務自動化の相談を受けています
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