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「チップをリクエスト」で著者にチップの受け取り設定をお願いできます

ある夜のことを、今でも時々思い出します。 リリースしたアプリの累計ダウンロード数が、2週間で17件でした。知り合いに頼んで入れてもらった分を除くと、実質どれだけなのかは、考えないようにしていました。Lily はその数字をスプレッドシートに記録して、ノートパソコンをそっと閉じて、ベ…
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「チップをリクエスト」で著者にチップの受け取り設定をお願いできます
ある夜のことを、今でも時々思い出します。 リリースしたアプリの累計ダウンロード数が、2週間で17件でした。知り合いに頼んで入れてもらった分を除くと、実質どれだけなのかは、考えないようにしていました。Lily はその数字をスプレッドシートに記録して、ノートパソコンをそっと閉じて、ベッドに転がりました。誰かに話すほどのことでもない、でも自分の中だけに置いておくには少し重い。そういう夜でした。 これを書いているのは、あの夜のことをもう少し正直に振り返りたいからです。個人開発を続けていると、「なぜ作るのか」という問いに何度もぶつかります。Lily もまだ答えを出しきれていないのですが、眠れなくて開いた App Store で偶然見つけたアプリが、そのヒントをこっそりくれた気がしています。
2026年の春、Lily はメモとタスク管理の中間くらいのアプリをひとりで作って、App Store に出しました。きっかけは単純で、「これがあれば Lily 自身が助かるのに」と思ったものが、既存のアプリでどこにも見つからなかったからです。設計からデザインからストア申請まで、全部ひとりで、夜中に少しずつ進めて、3か月かかりました。
審査が通った日は本当に嬉しかった。でもリリースから2週間が経つ頃には、ダウンロード数は17件、レビューは1件でした。そのレビューは「バグがある」という一言でした。すぐ直しました。それでも静かなまま。改善しても、改善が誰かに届いているのかさえわからない。そういう状態が続いていました。
Lily はこの頃、個人開発をやめようかと本気で考えていました。やめるというより、「続ける理由を見失っていた」という方が正直な表現かもしれません。誰かに使ってもらっている実感がなく、改善が役に立っているのかもわからない。そういう感覚が積み重なると、コードを開くことそのものが、段々とおっくうになってきます。
あの夜は特にひどくて、何もしたくないのに眠れない、という状態でした。
眠れないまま、目的もなく App Store をスクロールしていました。「集中できる」「落ち着く」そういうキーワードで検索して、いくつかのアプリを試していたとき、あるシンプルなホワイトノイズアプリに目が止まりました。
デザインはいまどき風ではなくて、少し古い印象でした。でも、雨音のループがとにかくなめらかで、広告もなく、操作が1タップで完結していた。値段は無料で、有料プランも購入を促す画面もない。
気がついたら30分くらい聴いていて、少し気持ちが落ち着いていました。
「誰が作ったんだろう」と思って、開発者名をタップしました。App Store の開発者ページに飛ぶと、アプリが1本だけ並んでいて、レビュー数の合計は3件でした。
3件というのは少ないのか、多いのか。Lily 自身の17件ダウンロードより少ない数字です。でも、3つのレビューを全部読みました。
1件目は「シンプルで助かります」という短い文。2件目は「広告がないのが最高」という一言。そして3件目が、こういう内容でした。
「不眠が続いてつらい時期があって、このアプリを毎晩使っていました。今は少し良くなりました。作ってくれてありがとうございます」
画面を見て、少しの間、動けなくなりました。
そのレビューを書いた人のことを、しばらく考えていました。つらい夜が続いていた人。毎晩このアプリを開いていた人。そして今は「少し良くなった」と書いている人。
その人のことを、このアプリを作った開発者は知っているんだろうか。知っているとしたら、どんな気持ちで読んだんだろうか。もしかして、今日も知らないままでいるかもしれない。
そういうことを、ぼーっと考えていました。
その場で、星5つのレビューを書きました。「眠れない夜に見つけました。シンプルで、助かっています」という短い文章でした。
Lily はそれまで、アプリのレビューをほとんど書いたことがありませんでした。良いと思っても、なんとなく後回しにして、忘れて、終わり。そういうパターンがずっと続いていました。でもあの夜は、書かずにはいられなかった。
このアプリを作った人に、届いてほしかった。「あなたが作ったもので、誰かが少し楽になりましたよ」ということを。
送信ボタンを押してから、少し恥ずかしいような、でも何かが解けたような気持ちになりました。
あのレビューを読んで以来、Lily は自分のアプリへの向き合い方を少し変えました。
それまでは「ダウンロード数が増えないと意味がない」という感覚が、どこかにありました。数字が可視化できる唯一の証拠で、数字がなければ誰にも届いていない、という思い込みです。でも3件のレビューに支えられていた開発者を見て、その考えがゆらぎました。
数字は、可視化できる一部でしかない。使っている人の気持ちは、数字には出てこない。それは当たり前のことかもしれないけれど、頭でわかっていることと、感じてわかることは違います。Lily はあの夜、初めて「感じてわかった」という気がします。
個人開発をしている人たちの多くは、本業の傍ら、夜中に少しずつ作っています。誰に頼まれたわけでもなく、報酬があるかどうかもわからないまま、それでも何かを形にしようとしている。
その「何か」は、知らない誰かの手に渡って、知らない誰かの眠れない夜に流れていることがあります。作った本人は知らないまま。使っている人も、作った人のことを知らないまま。
でも、そこには確かに繋がりがあります。フォロワーでも、売上でも、知名度でもない、もっと静かな繋がりです。Lily がレビューを書いたのは、その繋がりに小さく参加したかったからだったのかもしれません。
あの夜から、ひとつだけ小さな行動を変えました。使って良かったアプリには、すぐレビューを書くことにしています。今のところ、9本のアプリに書きました。開発者への感謝という気持ちもありますが、それよりも「この連鎖に自分も参加したい」という感覚の方が近いです。
自分のアプリについては、まだ正直に言えば不安があります。使ってくれている人がいるのかどうか、今もよくわからない。改善が届いているのか、誰かの役に立っているのか、測れていない部分の方がずっと多い。
でも、3件のレビューを見た夜以来、「見えないからゼロではない」という感覚が、少しだけ持てるようになりました。
誰かの深夜の作業が、知らない誰かの朝を変えているかもしれない。それはおそらく、Lily 自身の深夜の作業についても言えるはずで。そう思うと、また少しだけ、コードを開ける気がします。
まだ諦めていません。手を動かし続けることにしました。
Lily(@bokuwalily)― 個人開発者。AIと二人三脚で、iOSアプリやWebサービスを作っています
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Lily(@bokuwalily)― マーケ組織50名規模を統括するCMOを経て、いまは個人でiOSアプリやWebサービスを作っています。集客・導線設計と、AI導入・業務自動化の相談を受けています
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