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「自動で稼げる仕組みを作れ」という言葉をはじめて聞いたのは、個人開発をはじめて半年ほどが経った頃のことでした。誰かの発信をぼんやり眺めながら、「そうか、そういうものを目指せばいいんだ」と素直に思ったことを、今でも覚えています。 あれから2年が経ちます。今年の春、Lilyは「不労所…
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「自動で稼げる仕組みを作れ」という言葉をはじめて聞いたのは、個人開発をはじめて半年ほどが経った頃のことでした。誰かの発信をぼんやり眺めながら、「そうか、そういうものを目指せばいいんだ」と素直に思ったことを、今でも覚えています。 あれから2年が経ちます。今年の春、Lilyは「不労所得」という言葉を自分の中の辞書から静かに削除しました。劇的な決断ではなく、ある日の午後にふと「もうこの言葉、使うのをやめよう」と思っただけです。でもその瞬間、不思議と肩が軽くなりました。 このエッセイは、そこに至るまでの話です。失敗したとか成功したとか、そういう話ではありません。言葉ひとつに縛られて、そしてそこから抜け出すまでの、ちいさな内側の変化を書こうと思います。同じように個人開発をしている誰かに、少しでも届けば嬉しいです。
Lilyが最初に「これだ」と思ったのは、小さなWebツールを公開してから3ヶ月後のことでした。アフィリエイト収益がはじめて発生した日、金額にすれば1,200円ほどでしたが、そのときの興奮は今でも覚えています。何もしていない夜中に、自分の作ったものが誰かに使われてお金を生んでいる。それはたしかに、魔法みたいな体験でした。
この体験が「不労所得」という言葉をLilyの中に深く刻みました。もっと大きな仕組みを作れれば、もっと自動で回るものを積み上げれば、毎月安定した収入になるはず。そう信じて、次の作品、またその次の作品へと走り続けました。
今振り返ると、どこかのタイミングで「作ること」と「不労所得を得ること」がひっくり返っていたように思います。最初は「作りたいから作って、収益がついてくれば嬉しい」でした。でも気づいたら「不労所得になりそうなものを作る」に変わっていました。
言葉ひとつの違いですが、内側ではずいぶん大きな差がありました。
個人開発の時間のうち、作ることより分析に使う時間が増えていきました。ダッシュボードを開いては「今日の訪問者数」「先週比のクリック率」「今月の収益予測」を眺める毎日でした。作っている感覚ではなく、管理している感覚です。
ひどいときは、新しいアイデアが浮かんでも「これ、マネタイズできるだろうか」が最初の問いになっていました。答えがすぐ出ないものは後回しにして、面白いと思ったものより稼げそうなものを優先するようになっていました。そのうち、何を作りたいのかがわからなくなってきました。
楽しくはなかった、というより、「楽しいかどうか」を考えること自体をやめていたような気がします。
転機になったのは、同じく個人開発をしている知人との雑談でした。彼女は一人でWebサービスをいくつか運営していて、Lilyよりずっと長く続けているかたです。
その日、Lilyは「最近モチベが続かなくて」と軽い気持ちで話しました。彼女はしばらく考えてから、こう言いました。「Lilyって、何が好きで作ってるの?」
シンプルな問いでした。でも答えが出ませんでした。「稼げるから」ではおかしい、「楽しいから」とも言い切れない。沈黙しているLilyに、彼女はこう続けました。「私、収益は後からついてくればいいって決めてからラクになったよ。ゼロ月もあるし、先月は3万円あったし。でも作ること自体が好きだからやめる気にならない」
彼女がそう言い切れる理由を、Lilyはそのとき正直うらやましいと思いました。そして同時に、自分がこの問いに即座に答えられなかったことが、ちょっと怖かったです。
その会話から2週間ほど経った、4月のある午後のことです。習慣で収益ダッシュボードを開こうとして、ふと手が止まりました。「これ、毎日見る必要があるのかな」という気持ちが浮かんだのです。
Lilyはそのままダッシュボードを閉じて、ずっと後回しにしていた「作りたかっただけのもの」に手をつけました。収益の見込みはまったくない、ユーザーが何人つくかもわからない、でも前から気になっていたアイデアです。
その数時間が、久しぶりに「楽しい」と感じながら作業した時間でした。気づいたら夕方になっていて、完成したものを見て、理由なく嬉しかった。収益のことは何も考えていなかったのに。
その日を境に、「不労所得」という言葉を目標として使うのをやめました。言葉を変えただけで何かが劇的に変わったわけではありません。でも、気持ちの向く方向が少し変わりました。
それから、Lilyがやったことはとても地味です。
ひとつ目は、収益ダッシュボードを確認する頻度を「毎日」から「週1回、日曜の夜だけ」に変えました。最初は不安でしたが、1週間後に見ても結果はほぼ変わっていないし、7日分まとめて見るほうが傾向がつかみやすかったです。
ふたつ目は、アイデアを選ぶ最初の基準を「稼げるかどうか」から「作りたいかどうか」に戻しました。もちろん収益はゼロよりあったほうがよいです。でも最初のフィルターを「面白いか」に戻すだけで、手が動く速度がずいぶん違いました。アイデアを思いついたとき、身体が前のめりになる感覚が戻ってきました。
みっつ目は、「不労所得」という言葉を意識的に使わないようにしました。そのうち、使いたいとも思わなくなりました。今は「作ったものが誰かの役に立ち続けてくれたら嬉しい」という言い方のほうが、自分の気持ちに正直な気がしています。
誤解されたくないのですが、収益を求めること自体が悪いとは思っていません。生活がかかっていれば当然のことですし、作ったものにお金を払ってもらえることは、作り手として素直に嬉しいことです。
ただLilyの場合、「不労所得」という言葉がいつのまにか「楽をして稼がなければならない」というプレッシャーに変質していました。楽をするはずが、数字を追い続けて、作る楽しさを削って、結局しんどかったのです。
稼ぎたいという気持ちと、作りたいという気持ちを、両方正直に持てばいいと思います。どちらかを言い訳にして、もう一方を押し込めなくていい。そう気づいてから、ずいぶんシンプルになりました。
この文章を書いている8月の時点で、Lilyのツールやサービスからの収益は月によってばらつきがあります。稼げた月もあるし、ほぼゼロの月もあります。でも、作ることをやめようと思ったことは、ここ数ヶ月でありません。
それが、ひとつの答えなのかなと思っています。
「好きで続けている」という言葉は、以前のLilyには少し恥ずかしく聞こえていました。「ビジネスでやっているんだから、好きとか関係ない、もっとロジカルに動かないと」という気持ちがあったからだと思います。
でも今は、「好きで続けている」が一番正直な動機だと言えます。それを軸に置いたほうが、長く続けられます。作るものが自分らしくなります。そして、たまに収益が入ったとき、純粋に嬉しい。
「不労所得」をやめたのは、諦めたのではなく、自分に合う言葉を見つけ直したのだと思っています。もしこれを読んでいる誰かも、言葉にちょっとだけ疲れているなら、その言葉を一度そっと置いてみてください。そこに、自分の本音があるかもしれません。
Lily(@bokuwalily)― 個人開発者。AIと二人三脚で、iOSアプリやWebサービスを作っています
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Lily(@bokuwalily)― マーケ組織50名規模を統括するCMOを経て、いまは個人でiOSアプリやWebサービスを作っています。集客・導線設計と、AI導入・業務自動化の相談を受けています
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