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「チップをリクエスト」で著者にチップの受け取り設定をお願いできます

リリースボタンを押した直後、Lilyはしばらく画面から目を離せませんでした。 新しい機能の告知を書き終えて、SNSに投稿して、そのままアプリの通知ログをぼんやり眺めていました。1年以上前に届いたあのコメントを、頭のどこかで探しながら。 「もしかしたら、もうあの人はここにいないかも…
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「チップをリクエスト」で著者にチップの受け取り設定をお願いできます
リリースボタンを押した直後、Lilyはしばらく画面から目を離せませんでした。 新しい機能の告知を書き終えて、SNSに投稿して、そのままアプリの通知ログをぼんやり眺めていました。1年以上前に届いたあのコメントを、頭のどこかで探しながら。 「もしかしたら、もうあの人はここにいないかもしれない」——そう思いながらリリースするのは、不思議な感覚です。今日はそのことについて書いてみます。遅れた約束のこと、待たせてしまった人のこと、それでも作り続けることの意味を、自分なりに整理しようとした記録として。
1年と2ヶ月前、アプリのフィードバックフォームにこんなメッセージが届きました。
「登録した記録を、週ごとにまとめて見られると助かります。毎週月曜日に先週の振り返りをしているので、そこに使いたいんです」
読んだ瞬間、「ああ、確かに」と思いました。自分でも使っていて、なんとなく不便に感じていた部分でした。週次サマリー機能。技術的にはそこまで複雑ではありません。データを日付でまとめて表示するだけです。
Lilyはその日のうちに返信しました。「ご意見ありがとうございます。ぜひ検討してみます」と。送信ボタンを押して、タスク管理ツールにメモを追加して、その日の作業を終えました。
今思うと、「検討する」という言葉は便利すぎます。断りでも約束でもない、曖昧な宙吊り。送った側にしてみれば、「やってくれるのかな」と少し期待するかもしれない言葉です。でも送った自分にとっては、「すぐにはやらない」という意思表示でした。
その時点でのリリース待ちのタスクは47件ありました。優先度をつけたリストの中で、週次サマリーは中位に置かれました。「緊急ではないが、いつかは」という棚の上に静かに乗せられて。
個人開発をしていると、「いつかやる」リストは際限なく育ちます。
新しいアイデアが浮かぶ。ユーザーからリクエストが来る。自分で使っていて「ここ直したいな」と思う。そのたびにタスクは増えて、古いものは下へ下へと押し流されていきます。週次サマリーも、そうやって沈んでいきました。
正直に言うと、「難しかったから」ではありませんでした。むしろ逆で、「いつでもできる」という安心感が後回しにさせていました。
緊急のバグが出たら直す。新機能のアイデアが熱いうちに作る。ユーザーが増えたタイミングでサーバーの設定を見直す。そういった「今やらなければ」という引力のあるものが常に存在していて、引力のないものは待ち続けます。
週次サマリーには引力がありませんでした。それを送ってきた人がどれだけ毎週待っていたとしても、Lilyの側からは見えていませんでした。フィードバックフォームは一方通行で、相手の月曜日の朝のことは想像しないと分からないのです。
1年と2ヶ月が経って、ようやく週次サマリーに着手しました。
きっかけは、別のユーザーから届いた2通目のリクエストでした。「週ごとにまとめて振り返りたい」という言葉が、全く別の文脈から再び届いたとき、「ああ、これは本当に必要とされているんだ」とようやく実感しました。1人の要望ではなく、繰り返し届く声だと気づいた瞬間でした。
作り始めると、3日で動くものができました。本当に3日でした。1年以上待たせた機能が、3日で。
テストデータで週次表示が綺麗に並んだとき、素直に嬉しいとは思えませんでした。
「なんで1年前にやらなかったんだろう」という後悔と、「でもあの時は本当に余裕がなかった」という言い訳が、同時に頭の中で動いていました。どちらも正しいし、どちらも言い訳です。でもそういう複雑な気持ちのまま、リリースボタンを押しました。完璧な気分でリリースできることなんて、あまりないですよね。
リリースの告知を出してから、数時間後に通知が来ました。
「週次サマリー、ずっと待っていました。毎週使います」
送り主のユーザー名に見覚えはありませんでした。最初にリクエストをくれたあの人かどうか、確かめる術はありません。アプリ内では匿名に近い形でのフィードバックなので、同一人物かも分からないままです。
おそらく、最初にリクエストをくれた人はもうアプリを使っていないかもしれません。1年以上、届かない返事を待って、やがてアプリを閉じて、他の手段を見つけて、日常に戻っていった可能性は高いです。
それが現実だと思っています。
でも今日、別の誰かが「ずっと待っていました」と言いました。その人が最初の人かどうかよりも、「今ここに必要としている人がいる」という事実の方が、リリースボタンを押してよかったと思わせてくれます。
遅れた分の罪悪感は消えません。でも届いた人がいることは、本物です。
この経験から、Lilyは一つだけ決めたことがあります。
「いつかやります」を使わない。
代わりに「リストに入れます」と言うようにしました。確約ではなく、「忘れずに持っておく」という意思表示として。
たかが言葉の話です。でも自分の中で何かが変わりました。
「いつかやります」は相手への約束のように聞こえる言葉です。でも「リストに入れます」は、判断を先送りにしていることを正直に認めた言葉です。「ちゃんと持っている、でもいつかは分からない」という誠実な宙吊り。
実際、この変化でフィードバックへの返信が少し楽になりました。重すぎる約束をしなくていい。でも無視もしない。その中間を言語化できたことが、思ったより大きな変化でした。
リクエストを「いつかやる棚」に置くのではなく、「ちゃんと見えている場所」に置いておく。それだけで、優先度を考えるときの視野が変わります。何か月か後に「そういえばこれ、二度目のリクエスト来てたな」と気づけるのは、ちゃんと見えているからです。
個人開発をしていると、「誰かが待っているかもしれない」という感覚が、じわじわと積み重なっていきます。
派手な成功体験ではなく、1年後に届いた「ずっと待っていました」という一言。バグ報告に添えられた「よく使っています」という一言。使っている人の存在が、作ることの意味になっています。
Lilyが個人開発を続けられているのは、たぶんそういう小さな証拠が時々届くからです。大きな数字でも、バイラルなシェアでもなく、待っていてくれた誰かがいたという事実。
遅くなってすみません、と思いながら。届いてよかった、とも思いながら。
次の「いつかやります」になりかけているタスクを、今日また一つリストから引き上げようと思っています。あなたのリストにも、そういうものが一つあるかもしれません。
Lily(@bokuwalily)― 個人開発者。AIと二人三脚で、iOSアプリやWebサービスを作っています
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Lily(@bokuwalily)― マーケ組織50名規模を統括するCMOを経て、いまは個人でiOSアプリやWebサービスを作っています。集客・導線設計と、AI導入・業務自動化の相談を受けています
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