「会社員じゃないなら、時間は自由ですよね」と言われると、毎回どう返せばいいか迷います。嘘ではないんですが、正確でもない。会社に縛られていないのは本当でも、じゃあ自分の時間を自由に使えているかというと、むしろ逆で、会社員だった頃より時間の管理に頭を使っています。 この記事を書こうと思ったきっかけは小さなことで、個人開発のコミュニティで「どうやって開発の時間を作ってるんですか?」と聞かれたとき、ちゃんと答えられなかったことです。「なんとかやってます」と言いながら、自分でもうまく言語化できていなかった。それが少し悔しくて、ならば一度ちゃんと言葉にしてみようと思いました。 技術的な話はほとんど出てきません。ツールや仕組みより、Lilyというひとりのmakerが1日をどう使っているか、どこで失敗してきたかを、できるだけ正直に書いた文章です。読んで何かを真似しなくていいし、「参考にしてください」とも言えないくらい個人的な話です。ただ、同じように時間に悩んでいる誰かに少しでも刺さるものがあれば嬉しいです。
会社員じゃないと、構造は自分で作るしかない
個人開発をメインの活動にするようになってから最初の数ヶ月は、ひどいものでした。
起きる時間が毎日バラバラで、仕事をしているのかしていないのかもよくわからない状態が続きました。「締め切りがないから今日は後でいい」を繰り返して、夜中に焦ってコードを書いて、朝の判断力ゼロの状態でリリースして後悔する、というループです。
会社員のときは、外から構造が与えられていました。9時に始まって、ミーティングがあって、18時を過ぎれば「もう今日は終わりでいいか」という感覚が自然に生まれる。あの構造がなくなってはじめて、それがどれだけ楽だったかに気づきました。
自分で構造を作るというのは、思ったより難しいことです。「やる気のある日にやる」は机上の空論で、やる気は来るものではなく、仕組みが呼び込むものだと今は思っています。モチベーションを燃料にしていると、切れたときに何もできなくなります。それで何度もつまずきました。
1日のタイムラインを正直に晒す
今のLilyの1日は、だいたいこんなふうになっています。完璧ではないし、崩れる日もありますが、これが今のベースラインです。
午前中は「作る」時間だけにする
午前中は基本的に、外と一切つながりません。メッセージアプリも、SNSも、メールも見ない。この時間帯に、その日の一番重要な判断や作業を全部入れます。
新機能のロジックを考えたり、文章を書いたり、設計を練ったり。脳が一番クリアな時間を、外からの情報でつぶさないようにするためです。
最初は「朝イチでメッセージを確認しないと失礼では?」という罪悪感がありました。でも半年続けてみて誰にも怒られなかったし、重要な連絡は午後に確認しても遅くなかった。大半のことは、午前中に即応しなくても何も壊れないんだと気づいてからは、罪悪感もなくなりました。
午後は「応答と流れ作業」の時間
午後はリアクションの時間にしています。メッセージへの返信、SNSの確認、定型作業の処理、リリース後のチェック。
脳を使わなくていい作業を午後に回す理由は、判断力がもう残っていないからです。一日の中で下せる判断の数には限りがある、と信じているので、午後に重要な意思決定を入れないようにしています。「これ、今決めなきゃいけない?」と一度立ち止まって、翌朝に回せるなら回す。それだけで、午前中の質がずいぶん変わりました。
夕方以降はゆるくオフ
夕方以降は基本的に作業しません。ただ、「今日気になったこと」を軽くメモに書き残したり、翌日やることを3つだけ決めたりするくらいはします。ここで翌日の準備ができていると、朝の立ち上がりが全然違います。「何からやるか」を考えなくていい朝は、そのぶんすぐに作業に入れます。
自動化で「自分じゃなくていいこと」を手放した
時間を作るうえで、一番効いたのは「自動化」でした。ただこれは、特定のツールを使ったとか、プログラムを組んだという話より、「自分の脳を使わなくていい作業を整理した」という話です。
毎日同じ手順でやっていること。ファイルの整理、バックアップの確認、定点のチェック作業、配信の準備。こういったものは、自分が考えなくても流れるようにしておくと、朝に「今日も手動でやらなきゃ」というストレスがゼロになります。小さなストレスのように見えますが、毎日積み重なると地味に重くて、判断力を少しずつ削っていきます。
「考える」と「作業する」を最初に仕分けた
自動化の前にやったのが、タスクの仕分けです。「これは判断が必要か、それとも手順を踏めばいいだけか」という問いを、全部のタスクに一度だけ立てました。
答えが「手順を踏むだけ」なら、できる限り自動化するか、手順書にしてあとは流すだけにする。答えが「判断が必要」なら、それは午前中の自分だけが触るタスクにする。
この仕分けをしてから、「気づいたら一日中忙しかったけど何も進んでない」という日が減りました。忙しさと前進は別物だったんだと、恥ずかしながらそのとき初めてちゃんとわかりました。
失敗してきたこと
うまくいかなかったことも正直に書きます。
全部ツールで解決しようとした
個人開発を始めた最初の頃は、便利そうなツールを次々と試していました。タスク管理ツール、時間計測アプリ、習慣トラッカー、ノートアプリ。それ自体が楽しいんですが、ツールの管理が仕事になっていて、肝心の開発が進まないという本末転倒な時期がありました。
今は使うものを意図的に減らしています。少ないほうが、考えることが減る。「何を使えばいいか」を考えている時間は、作っていない時間です。
「毎日コミット」を目標にした
一時期、毎日GitHubにコミットすることを目標にしていました。連続記録が途切れないように、意味のない小さな変更をしてしまったこともあります。記録を維持することが目的になっていて、プロダクトが前進しているかどうかはどこかに行っていました。本末転倒の最たる例です。
今は「今週、何か一つ前に進んだか」くらいの粒度で自分を評価しています。記録よりも、一週間後に使えるものが増えているかどうかのほうが、ずっと大事です。
休みをとるのが怖かった
「個人開発は自分でやめない限り終わらない」という焦りがあって、休日もなんとなく作業していた時期がありました。でも、ちゃんと休まなかった週のほうが、翌週の生産性が明らかに低かった。休んでいない状態で書いたコードは、後から見ると判断が甘くて直しが多い。
休むのもスキルだと思ってから、意識して何もしない日を作るようにしました。何もしない日を持てる人のほうが、長く続けられます。
「時間を守る」より「どこで負けるかを先に決める」
個人開発者が時間管理で陥りやすい罠のひとつに、「完璧なルーティンを目指してしまう」があると思います。Lilyも長い間これにはまっていました。
朝6時に起きて、運動して、集中作業して、夜11時には寝る。それ自体は理想ですが、一つ崩れると全部崩れる設計になっていたので、少しズレると「今日はもう終わりだ」という気持ちになっていました。完璧にできない自分を責めて、さらに崩れていくループです。
今は、最初から「どこかは崩れる」前提で組んでいます。午前中の作業が崩れたら、午後に一つだけ大事な判断をする。それも無理なら、今日は整理と記録だけにする。諦めるラインをあらかじめ持っておくと、一つ崩れても全部崩れなくなりました。
完璧なルーティンを持っている個人開発者より、崩れても立て直せる個人開発者のほうが長く続けられると、個人的には思っています。完璧にやれた日より、ひどい日でも何かひとつだけやれた日のほうが、半年後に効いています。
作り続けること自体が答えだと気づいた
時間の使い方について長々と書いてきましたが、最後に一番正直なことを言うと、今でも毎日うまくいっているわけではありません。集中できない日もあるし、何も進まなかった週もあります。作っているのか潰れているのかわからなくなる時期も、定期的にきます。
でも今は、それが「普通」だとわかっています。完璧に管理された時間の中でしか良いものを作れないなら、個人開発者なんて誰もいなくなってしまう。
自動化は判断を減らすためのもので、ルーティンは再起動のためのもので、仕分けは集中を守るためのものです。どれも、「毎日作り続ける」という一つのことのための道具でしかない。
道具は使うためにあります。管理するためでも、完璧に揃えるためでもない。それを思い出せると、少し楽になります。
同じように時間に悩みながら作り続けている方に、この文章が少し届けばいいなと思っています。一緒に、なんとかやっていきましょう。
Lily(@bokuwalily)― 個人開発者。AIと二人三脚で、iOSアプリやWebサービスを作っています
- 制作物・記事は bokuwalily.com にまとめています🖥️
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